『古川ロッパ昭和日記 戦前篇』『同 戦中篇』
戦時中の暮らしというものがどうだったのか、
その生の声を知りたくて、読む。
物資統制中は大変な思いをしながらも、
それでもかなり良い暮らしをしていたとは驚き。
昭和19年や20年でも、常食でないにしても白米や卵を食べ、
麻雀やポーカーに興じているとは。
知名度にものを言わせて慰問で物資を稼ぐなど、
庶民からすれば苛立ちの種だろう。
もっとも、その時代は臣民一人ひとりに逞しく生きるよう強いた、
その喜劇役者としての一例にすぎないのかもしれない。
年を経るにつれて、敗戦色が濃くなってゆくのが興味深い。
喜劇を弾圧する内務省当局の行き当たりばったりな対応はさながら悲喜劇。
報道が連合国側の動静を知って、
1945年初めにすでにおぼろげに敗戦を予期していたらしいとは驚いた。
もっと言論統制と防諜が効いていて、
そのようなことは話せなかったものと捉えていたが。
いずれにしても、戦時とはいえ、同じ人間が日常を引きずって生きていた、
その普遍性に戦争をかぶせて初めてわかる、その虚しさ。
『戦後篇』『晩年篇』を読み残している。
ちびちび進めながら、今度は戦後の混乱と復興を眺められるぼが楽しみ。
柏木惠子『子どもが育つ条件 ──家族心理学から考える』
岩波新書版。
内容は、「子どもが育つ」というより「大人が育てられる条件」であり、
すなわち、男性の長時間労働と家庭不在への指弾が多い。
2008年初版からここ10年余りで、
男性の育児休業取得にまつわる状況は改善しただろうが、
抜本的には変わっていない現状が見て取れる。
「「先回り育児」がもたらすもの」という章は子育てへの即効性ある智慧であり、
読んでいて納得させられた。
年齢よりは早く習いごとに通わせるより、
子どもに応答的であることが今後必要である、ということ。
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