作品は円環的。
登場人物がみな親類で似通っていて、
部屋は決まっていても定位置なくふらふらする。
赤い縮れ毛もネクタイも栗も、ひとたび登場して打ち棄てられることがない。
作者のあとがきによれば、作品の頭と尾が噛む構成となるはずだったとのこと。
古さに穴の空いた天井を見上げていると井戸を覗く心地が語られる。
主人公は小野町子だが、別の登場人物から別の一人を覗いても、
同じようにぐるぐると円環的に物語を彷徨できそうな気がする。
この閉ざされた不可思議な空間を、作品の空気としてたゆたう心地が、
第七官界彷徨なのかもしれない。
不思議だ。過去に読んだことくらいありそうなほど、この空気感は心地よい。
それなのに実際は、かつて読んだことのない仕立てだ。
そう感じた。
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