作者はOulipoのメンバーだとのことだが、実験性はさほど感じなかった。
因果がつながり伏線がどんどん回収されていく快感はたまらなかった。
「筆者が自ら考案したアルゴリズムで作った粗筋」とのことだが、
一体どんなアルゴリズムなのだろう?
白洲正子『近江山河抄』
白洲正子『近江山河抄』
講談社文芸文庫版。
近江に住みはじめたからには、近江について知りたかった。
そんななか、手近にあったため手に取った。
(個人的に、滋賀という県名はそぐわない。
滋賀とは現大津市の西半分を占める滋賀郡に由来するが、
その地域が近江の支配的・代表的な立場にあるわけではないからだ。
もっとも、宮城県(宮城郡に由来)、神奈川県(神奈川宿に由来)といい、
廃藩置県という明治政府の反幕府的な立場による命名は、
多かれ少なかれ同じ憂き目を負っているともいえるが)
「近江は日本の楽屋裏だ」という弁は、
奈良時代以前のヤマト朝廷の古代史が眠っている歴史の豊かさから、
思わず頷かされる。
京都と違って田舎へ帰した奈良よりも昔の歴史の記憶が、
消えかけながらわずかに残っている、
そんな気配みたいなものを掘り起こしてくれる。
エッセイながら歴史書なみの情報量だった。
今後、近江のあちこちを旅しつつ、参照したくなる本だった。
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