21.3.18

夏目漱石「野分」、団藤重光『法学の基礎』

夏目漱石「野分」

教訓めいたところが「虞美人草」に近いと感じたが、同年の著作らしい。
もっとも、理想と現実の相容れなさを
やや突き放して描く漱石らしさは変わらない。

団藤重光『法学の基礎 [第2版]』

人間の主体性を重視し、市民社会の発展を願う書き口で、
地に足のついた良識派の学者という以上に訴えるものがある。
だから第一に、法が「われわれのもの」と語られるし、
「法は人間の営みである」(p.141)から、
法がつくられるニーズや駆け引き、
さらには生物学的な層、経済学的な層、といった
マルクスの上部・下部構造やフェーブルの歴史構造のようなものも説く。
部分を押さえつつ全体を見て、現実を見据えたうえで理想を目指す、
そのような、法を内部からではなく外部からも語る、
まさに法を知るための入門書としてふさわしく、読み応えがあった。
何より、法と法学のダイナミズムがよくわかった。
個人的には、英米法的な視座が体得できたように思う。

法学を訓詁学と捉えていた大学時代に出会っていたかった。

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