25.2.17

坂口安吾「アンゴウ」「恋愛論」「行雲流水」、江戸川乱歩「心理試験」「一人二役」

坂口安吾「アンゴウ」

萩柚月による朗読。

ふと古書店で見つけたかつての蔵書に挟まれていた暗号文から、
自らの生きざまを見出だしてゆく。
そして、結末はなんとも物がなしい。
暗号文で語り始められた短篇の行き着く結末とは思えない。
無批判なまま受け容れている表面的な日常を一枚剥ぎ取れば、
過去があり人生があり、はっとするような気づきがある、
そのような、過去と現在を掘り下げるような感覚。


坂口安吾「恋愛論」

物袋綾子による朗読。

恋愛について語るというより、
恋愛を例にして日本語のあいまいさに言及する。

安吾は文化を内面化した枠組み・軛のように捉えていて、
手放しで賛美することはしない。
そして、枠組みは無意識にではなく明確に語られなくてはならない、
そう曖昧な文化たる日本に対して語りかける。
その視点がある種の西洋中心主義になっているのは時代性かもしれないが、
普段のなにげない感性への良い毒になって、おもしろい。


坂口安吾「行雲流水」

萩柚月による朗読。

安吾らしいグロテスクさもさることながら、
1949年発表というだけあって、生きるためのむきだしの必死さが清々しい。
やはり安吾は大衆を視ている。


江戸川乱歩「心理試験」

二宮隆による朗読。
いかにも探偵小説という作品だった。
当時、心理分析はまったく目新しかっただろうが、
文学が輸入を担うということが、興味深いといえば興味深い。
むしろ、物語が解剖され分析されるという文学にとって危うい事態を、
作品化することで内包してしまい、新たな語りの手段としてしまう、
そのことがユーモアというか、面白いと思った。
物語は技術によって廃れるどころか富む、
いやむしろ、物語はいかなる時代や境遇でも、そこに在るのだ。

江戸川乱歩「一人二役」

喜多川拓郎による朗読。
まぁ、ちょっとした奇譚、といった作品。

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