斎藤潤『日本《島旅》紀行』『沖縄・奄美《島旅》紀行』
筆者は旅ライターという肩書きだが、文章が巧くて読ませる。
描写は短くもキレがあって、旅先の雰囲気や人柄を捉えている。
ときどき挿まれる写真が興ざめなぐらいだ。
だから、旅情がわくというより、楽しい旅の知らせを聞くようだった。
『日本《島旅》紀行』は、利尻島に始まり、
ときどき挿まれる写真が興ざめなぐらいだ。
だから、旅情がわくというより、楽しい旅の知らせを聞くようだった。
『日本《島旅》紀行』は、利尻島に始まり、
東京都島嶼部や瀬戸内の島々など日本中の島をめぐる。
『沖縄・奄美《島旅》紀行』は、沖縄と奄美の島々だ。
切り口は決まって、その島ならではの雰囲気や暮らし、人との交流だ。
どの島も狭い世界では決してなく、一つの宇宙であって、
豊かな歴史と文化がたくわえられている。
航路ひとつとっても外界とのありようをさまざまに規定するし、
面積や地形や、どの程度の道路や舗装があるかも、決定的だ。
食や伝統や風景だけではない観察眼が、島を富ませる。
旅は、こうありたいものだ。
どちらも光文社新書版をkindleで読んだ。
正岡子規『病牀六尺』
言葉が世界そのものだ、と実感する。
筆者が病床の一室で、苦しい闘病を強いられているにしても、
絵を愉しみ、俳諧を詠み、人と話し、新聞記事について考える、
その営みを時間に流し去るのではなく言葉にするというだけで、
子規の病床は間違いなく賑やかで変化に富んでいた。
思いつくまま句を作ってみるなんて、しかもその句のおかしさよ。
思いつくまま句を作ってみるなんて、しかもその句のおかしさよ。
逆に、言葉を喪っては、しわくちゃの老いと病にすぎない。
その決定的な落差に唖然とする。
岩波文庫と青空文庫を併用して読んだ。
村上春樹『騎士団長殺し』
ユーモラスな異形がしばしば登場するからか、
暗闇の洞窟のような試練を抜けるからか、
読後感はいかにも『千と千尋の神隠し』だった。
村上春樹の長篇はどれも多かれ少なかれRPGだ。
主人公が特権的に自らを探究する。
語り口が読者への丁寧な説明を意識する傾向は、いっそう強まっていると思った。
章立ては短く、時系列は参照されても交錯はしない。
0 件のコメント:
コメントを投稿