6.4.18

ジョン・ケネス・ガルブレイス『大暴落1929』

村井章子訳。日経BPクラシックス版。
2008年刊なので、リーマン・ショックの時期にうってつけだっただろう。

経済学史における制度派の代表的な人物として著者を知っていたが、
著作を読むのは初めて。
あまりに平易な語り口は経済学というよりエッセイのようで、驚いた。

タイトル通り、世界大恐慌の発端となった1929年のアメリカのバブル崩壊を扱う。
「ブラック・チューズデー」の常套句はまるでそれが一日の出来事のように伝えるが、
実態は、値崩れだけでもひと月もあったことは、冷静な損切りの大切さを物語る。
そして、バブルという狂乱が全体主義的な異様な空気を当然であるかのように帯びて、
その全体を突き落とす、この過程はチキンレースさながらだ。

初めは人知れず熱を帯び、徐々に耳目を集めて過熱し、
それを当然とする風潮がはびこり異見を駆逐する。
すると、崩壊が始まっても夢を無理に信じ込もうとする。
また、信用取引、レバレッジ、投資信託のようなメタな金融商品が、
カネを市場に何周も駆け回らせる手法は、
むしろ昨今のバブルと大して違わない。
このあたりは、一般則を引き出すまでもなく、
実例がそのまま後の歴史で繰り返されているように思われる。

終章は、バブルの背景を考察し、
貧富差の拡大や持株会社構造や預金保護不在などを挙げている。
それらは1929年の社会システムに特有の問題だ。
が、それらの羅列を眺めて思ったのは、
社会システムというものはある条件下において、
きちんと因果律に従って崩壊する、ということだ。
どのような要素が歯車のように組み合わさるかは、社会システムによるが。
そして、社会システムがそのように脆弱性を孕んでいる以上、
分析と補正は欠かせない。
プログラムにおけるバグにとてもよく似ている。

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