31.12.11

『ドキュメント東日本大震災 そのとき薬剤師は医療チームの要になった』

日経ドラッグインフォメーション東日本大震災取材班の編著。
被災地に赴き、あるいは被災地域の一員として
被災者の医療支援を行った薬剤師、医師への取材をまとめたもの。
取材はおおむね三月末から四月中旬に行われ、初版は六月。
薬剤師の知人に借りて読める。

自分はこの本を、非常事態への対応の実例集として読んだ。
所感をメモにまとめておく。

・現場の判断
現場の判断を迅速かつ適切に下すことが求められる。
その前提として、実務への精通と柔軟な対応が不可欠だ。
先発薬や市販薬での代替を医師に提案する場面は、異口同音に語られている。

・専門化と非常事態
派遣医療チームの一員として薬剤師が活躍すると、一般的には想像されない。
事実、阪神大震災時にはそうではなかったらしい。
医薬分業が進んで、医師と患者を投薬面で結ぶ調剤薬局の役割が明確になったためか。
薬剤師ではなく「調剤薬局の役割」書いたのは、
物資の制限された下で手持ちをうまく組み合わせるという「薬剤師の活躍」が
本書タイトルの「要」の謂いの一つだからだ
(もう一つは、医療従事者としてのフットワークだろう)。
この、分業化による的確で迅速な処方は、震災支援に益した一例だろう。
ただ、医師・看護師の処方知識への副作用も垣間見えたように読める箇所もあった。

・サービスのあり方
医療とは、専門性を駆使して個々人にサービスを与える業種だ。
このサービスの非常時の身動きは、
他の広義のサービス業の改良のヒントになりうるように思った。
付加価値創出のため、サービス業全体が
個々へのきめ細やかさに対応してゆく流れにあるからだ。
例えば大学運営において、教育職員・事務職員ともに、
教職員という大枠の中で所属の部署・委員会ごとの専門性をつど身につける。
悪くいえば付け焼き刃的な知識での対応の限界を超えるには、
ここ数年よく耳にする事務職員の専門化は欠かせないだろう。

0 件のコメント: