26.1.12

後藤明生『首塚の上のアドバルーン』、津田大介『Twitter社会論』

後藤明生『首塚の上のアドバルーン』

七つの短篇からなる連作。
東京郊外で開発の著しい幕張に引っ越してきて、
そこから偶然、馬加康胤の首塚を見つける。
幕張の地名由来となった千葉氏傍系の士族だ。
まっさらな土地に建設されたニュータウンにいながら、
旧市民との微妙な関係、さらなる過去にある馬加氏の謎をめぐって、
滝口入道、新田義貞など、首塚をめぐっての連想と脱線、と続く。

後藤明生は『挟み撃ち』を読んで、物語の脱線が繋がってゆく面白さを感じた。
『挟み撃ち』はゴーゴリの「外套」を下敷きに、
アカーキー・アカーキエヴィチならぬ赤木氏が外套を探して彷徨する。
『首塚の上のアドバルーン』も、脱線の横滑りだ。
しかし、脱線は繋がらずに、馬加康胤の首塚とニュータウンをめぐって
ぐるぐると私的にまわってゆくばかり。
物語はあまり何も産まない。
しかし、郊外というものを一枚剥いだ歴史、得体の知れないトポス、というものを
この連作は感じさせる。
ニュータウンをこのような多重性で描いた作品は、意外にそう多くない。


津田大介『Twitter社会論』

iPhoneアプリとしての無料配布を享受し、私の初めて読んだ電子書籍だ。
メディアジャーナリストでtwitterヘビーユーザーによるTwitter概論。
140字のタイムラインというtwitterがどのように世に出て、
新たなコミュニケーションツールとして使用されているか、
メディア、ジャーナリズム、政治、経済にどう作用しているか、
刊行時2009年11月の趨勢がまとめられている。
あとがきには、その後にリツイート機能の実装の影響などが附記されている。
概論としてまとまっているので、twitterの背景や状況を一通り知るには良い。

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