12.4.12

E.M.フォースター『小説の様相』、大塚英志『キャラクター小説の作り方』、大江健三郎『小説の方法』

文学の生成論とでもいえばいいのか、小説家による小説論を立て続けに読んだ。
これまで自分がアプローチしなかった小説論であり、
文学部的なテクスト原理主義の読解に違和感を持っていた自分にとって、
新鮮な方法論だった。


・E.M.フォースター『小説の様相』

これは主に物語に関する生成論。
登場人物についての章もあるが、
ストーリーの中で苦悩し、プロットを展開させる存在としての登場人物。
現実とは違って小説はどう語り、どう場面や世界や心中を明らかにするか、
そういった観点から述べられている。
フォースターは理論家であり小説家であるため、
書く側の論理がふんだんに含まれるのも面白い。
登場人物の生き生きとした描写がプロット優先の犠牲になって
小説全体が尻窄みになりがちだ、とか、
平板な登場人物は利用しやすい、とか。


・大塚英志『キャラクター小説の作り方』

キャラクター小説とは今でいうライトノベル。
キャラクターと世界観を売りとした商品としてのラノベを
文学たらしめようとした大塚英志の、
その野心の初期の文章に当たる。
物語構成術と、キャラクター作成術、この二つの手の内の開示は面白かった。


・大江健三郎『小説の方法』

読み終えて、大作家はかくも方法論的に書いているのか、と驚嘆した。
キーワードは「異化」。
無為に過ぎ去る日常を生き生きと再呈示する、小説の効果の根源だ。
「異化」の方法として、
文体(日常表現からの脱出)
イメージ(展開やグロテスクさ、パロディが現実感を浮き彫りにする)
トリックスター(中心から周縁までを貫く主人公の経巡り)
の方法論が語られる。
山口昌男のアルレッキーノ論とロシアフォルマリズムに大きな影響を受けていて、
作品読解中、援用しすぎと思わずにはいられないところはあるものの、
読解と記述の相互作用の意味では、それでいいのかもしれない。

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