24.8.08

18, (20), 21, 45

三年半ぶりに、高校のときの先生にお会いした。
高三の折り、柄谷行人を読んでいたら一言アドバイスをくれ、
修了間近になると授業で、人生についての講義のようなことをして下さった先生である。
人生講義とはいっても、全く堅苦しくなくて、
ニザンやヘミングウェイや内田樹を引きながら
哲学的な雑談だったわけだけれども、
Genius lociの話は、大阪を離れることになっていた自分にとって、
個別に聞かされているように感じるくらい特別な内容だったし、
18歳だった自分にとって「私は二十歳だった」話は、
現在21の自分からしても、je ne laisserais personne le direである。
なにより重畳なのは、自分にとって時間=歴史の吹きだまりのような地で
先生に再会できたことだった。
その地にいる人々の表情、話し振り、立ち居振る舞いは、
なぜか自分にとって、昔も今も変わりない。
そんな「路地」のような場所で、しかもその「路地」はマンションに再開発され、
自分も外国帰りで、そんな断絶の後に、ふと、先生と出会ったのだった。

本の話だった。本を巡る、先生の人生だった。
(C'était une histoire autour des livres : son histoire autour de ses livres.)
先生の話は、どれも興味深かった。
高木仁三郎、鳥飼哲、山田稔、浅田彰、庄司薫、いろいろな人物名が取り巻きとして出てきて、
オリュウノオバの語りではなく、スライド式の本棚に収まりきらない蔵書に織り込まれた、
多種多様でありつつ一本に繋がった話だった。
「これがこの話と繋がるんだけど、」と先生が何度も口にしていたのは、
つまり、そういうことだったのだ。

先生からのアドバイス。
本には、入手した場所(書店)と日付を記しておくこと。
脳裡をよぎったのは、青木淳悟『四十日と四十夜のメルヘン』だった。
日付を附された無数の書物が、その日付によって連なり、円環してゆく。
物語は繰り返す、まさに、先生と自分が久しぶりに出会い、語り合うように。
(もちろん、「物語」と「人生」は、ここでは同義 «histoire» だ)

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