10.8.08

内向2

黒井千次『時間』。
タイトルがえらく哲学的にごろんと横たわっているものだから
長らく躊躇してきた作品だが、そんなんではなかった。
人がどのように課長になるのかを描き、どのように社会が作られているのかを知り、
どのように時代が流れてゆくのかを理解できる、という非常に精巧な短篇。
かくありたい。

『マルコムX自伝』は、ここ数週間でゆっくりと読んで、昨日読了。
自伝って、本を読む愉しさの最も現れるジャンルに思われる。
特に、彼のような激動の人生を歩んで死んだ人間の自伝は、
小説でもあり評論でもあり人生訓でもあり哲学書でもあり冒険譚でもある。
人と社会と歴史のそれぞれがどっぷりと浸っているから、
どんな人文書のジャンルだと云っても過言ではないくらい。
これは必読かもしれない……。

さて、そんなことを云っているうちに、
待ち人がローレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』の1/3を読破した模様。
どうして、夏目漱石『吾輩は猫である』のネタ本になったりと、
日本文学にもかくも影響を与えた本が
ちょっとコアな文学マニアしか知らないのかがわからない。
さて、自分は次に何を読もうか。

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