不安なる今日の始まりミキサーの中ずたずたの人参廻る 塚本邦雄
所在ない孤独は不健康に過ぎる。空梅雨の曇り空は気軽な外出をも許さない。
書を捨てることも街に出ることもできず、狭い部屋をうろうろする。
恐ろしいことに、この退屈のなか時間は幾時間も飛び去るのだ。
今日したことに特別なことは何もない。
そういえば、夕、フライパンでおびただしい数の豆鯵を熱した。
木べらで掻き回すと、みなやすやすと破れ、引き千切れた。
さらに無惨に、醤油と味噌を注いでこねくり回した。
魚たちは潰されて泥のようになった。
このおもちゃにされた屍骸を、私は弁当箱に詰める。
明日の昼に玄米とともに饗されるだろう。
残忍? 否、さのみにあらず。
今日、贄と化した鯵とほぼ同数が、冷蔵庫で次回を待っている。
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