14.10.09

ラフマニノフの鋭利さ

『パガニーニの主題による狂詩曲』でもっとも有名なのは第18変奏だが、
私はあまり好きではない。
ロマンチックすぎるきらいのせいでもあるが、
第19変奏からイ短調になって一気に駆け抜けつつ展開されてゆくピアノの鋭利さと
それを引き受けつつ盛り上げるオーケストラの脇役に徹する名脇役ぶり、
これが毒を秘めていて、文字どおり体が痺れる。
第18変奏は、その直後の美しい裏切りの前座として置かれた楽園なのではないか。
そして第19変奏からの失楽園が、その猛々しさゆえに耳を魅了するのではないか。

ラフマニノフはこのように、心地よい痙攣が身を走る経験だ。
細やかにメロディーが散りばめられたと思うと、
一転して叩きつけるような荒々しさが場を覆う。
西欧クラシック音楽の細やか一辺倒を
大海原のさざ波として呑み込んでしまうかのようだ。

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