15.3.11

アントニオ・タブッキ『イタリア広場』

ファシスト、第二次大戦、レジスタンス、民主化、労働運動──
物語はイタリア激動の時代を貫き、
タイトルであるイタリア広場での出来事がそれを象徴する。
ただし、時代背景の説明は極力まで切り詰められ、
世界史の一般常識を欠いてはおそらく漠然として分からないだろう。

エピソードの堆積は『百年の孤独』と同じように家系図で纏め上げられている。
だが、饒舌ではない。むしろ、一つ一つ語っては黙り込むように、
ほんの短い物語の羅列が、大きな一本の物語の進行となっている。
とてもゆっくりだし、断片的で、その一つ一つが寓話のよう。
叙述が無駄な時間を越え、描写はほんの一言二言までに短く、
それがとても豊かなイメージを生む。
これはすごい、と思った。

0 件のコメント: