・石田梅岩『都鄙問答』
1935年初版の岩波文庫版で読んだ。
註釈も解説もない漢文混じり旧仮名遣いは薄学の徒にはしんどく、
およそひと月弱もかかってようやく読了。
ただ、内容も梅厳の語りも平易だ。
問答のタイトルどおり、客の問いに梅岩がひたすら答える。
愚かな客に対しても手を抜かず、僧侶や読書人の問いへも物怖じせず、
ひたすら己の哲学を開陳し、そこから回答を見出だす。
梅岩の心学たる思考が、あくまで具体的な形を取って透けて見える。
町人に対する実際的な学問という意味で、問答の形式はわかりやすい。
神儒仏のどれを切り口としても達するところは一つの倫理学、と説く
巻之三(性理問答の段)は、特に興味深かった。
ほかのどこ箇所を読んでも感じられることだが、
要は何の謂いか、という、言説に対する根源的な問いが"心"学たる所以が、
もっとも壮大で深く貫かれている。
また、西田哲学的、東洋的な、差異を見ない無批判な統合も一方で感じた。
・ジョン・ダイガン『トリコロールに燃えて』
両大戦間期から第二次大戦を経た、ギルダ、ミア、ガイの三者の生き様の絡みあい。
ギルダが実はナチス軍へのスパイ活動に従事していたというのは、附会に思われた。
ナチスへ強力してしまう登場人物が主人公にいてもいいじゃないか。
どうして主人公は常に免責されるのだろう。
・リー・アンクリッチ『トイ・ストーリー3』
おもちゃで遊ぶ年齢ではなくなってから、という設定から、観たいとは思っていた。
勧善懲悪っぽい二元論がストーリー展開の迅速さのために導入されていた感が否めないが、
内容としてはハリウッド的な冒険譚で、楽しめて観ることができた。
それにしても、おもちゃというのはみな個性的すぎるほどに個性的で、
アイデンティティが出来上がっているなぁ。
そのための設定や背景があってこそのキャラクターだから、ということか。
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