同名で『ダ・ヴィンチ』に連載の記事をまとめたもので、
読者からの投稿から優れた短歌を載せ、著者がコメントを附している。
選者が穂村弘だからか、はっとさせるような口語の短歌、
穂村弘っぽいものがほとんど。
気に入った歌をいくつかメモしておく。
カーナビが「目的地です」というたびに僕らは笑った涙が出るほど
君は君の匂いをさせて眠ってる同じシャンプー使った夜も
たくさんの遺影で出来ている青い青い青い空を見上げる
「ねえ起きて」ほっぺを軽くはたかれて思えばあれが最初のビンタ
この空を覚えていようと誓った日そのことだけをただ覚えている
ほんとうのこと(今日世界で死に果てた羽虫の総数など)を知りたい
共感できる一瞬や一主観を捉えた静画のような歌が多く、面白かった。
それにしても、素人とプロとの違いが透けるようだ。
両者の相違が曖昧だとしても、こうして比較が膨らむと一般性が見えてくる。
素人はやはり自分の体験に立脚していて、
そこから一般性が取り出されて共感や感動に至る。
プロはもう体験は薄い。
主題がすでに虚構の域にあって、アンチテーゼの位置から現実を貫通する。
そんなように、読んで感じた。
読みやすさという点では、むしろ素人の歌で秀逸なもののほうが勝ろう。
・ フィリップ・ロス『さようなら コロンバス』
ロスのデビュー作。描写が軽やかで爽やかだった。
ユダヤ人家庭の貧富、街の貧富と、
それを乗り越えようとする若い人々の意識されざる苦労が、
主題とは別のところで鮮やかだったように思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿