『われわれの祖先』三部作の一。
トルコとの戦争でまっぷたつになって帰還した子爵が悪の権化となり、
善のもう半分と戦い、そして一緒になるまでが、寓話的に語られる。
寓話的な物語論理が支配しているから、ストーリー展開は読める。
しかし、そういう物語はクライマックスの運びが、結末への着地が難しい。
この作品のさわりは、二つの半分ずつによる決闘だろう。
剣が相手へ届くが、もう半分のあったところばかりを切り裂く。
それは、刺している身のあったところだ。
また、善と悪の奇妙な一致も面白い。
完全だったころにはわからないものが見える、そう二つの半身は呟く。
そこで、この小説で描かれる善悪とは、関係性においてなのだとわかる。
憎しみや妬みが悪、慈しみや哀れみが善。
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