12.4.08

ジュラで考えたこと 2

和辻哲郎の『風土』を読みつつ、
ヨーロッパをWiese(牧場)とみる洞察には、
そのヨーロッパにいながらにして驚かされる。

牧場としてのヨーロッパは低湿に起因すると和辻は云う。
実感としては妥当に思われる。
私がストラスブールおよびパリで驚いたうちの一つに、
雨が降っても、あまりまじめに濡れまいとしないことだ。
着ているものにフードがあればそれをかぶり、
なければないで濡れるにまかせる。
半分冗談と思うが、濡れると頭髪に良いと思っている人も少なくないとか。
彼らにとって、小雨程度でもすかさず傘をさす日本の風景は、
さながら過敏症のような印象を与えるに違いない。

ただし、一度傘のないときに雨に降られてみるとわかるが、
ここの雨は「湿気ていない」。
矛盾した表現だが、云い得て妙だと思っている。
四月のような雨がちで霧も出るような時期で
ない限り、
降雨はあまり持続せず、粒が小さく、湿度上昇を伴わない。
ヨーロッパの雨はこういうものである、
これがフランス生活のなかで発見した帰結だった。
だから和辻が云うように、野は牧草で覆われ、雑草も苔もない。

しかし、ジュラはそうではなく、
例えば森を散策すれば木の幹は苔に覆われ、
日本ほどではないがススキのようなぼうぼうの草が散見される。
そして重要なのは、湿気ているということだった。
四月だからかと思ったが、一時的だけなら苔はこうは生さない。
写真はRevignyの村からすぐに歩いてゆける山道の脇で、
森の奥深くはないために木々は細いが、
BoissiaからClairvauxの湖に抜ける森は、
さながら箕面の山にいるような感覚を受けた。


ジュラの実家に招いてくれた友人に訊くと、
やはりこのあたりは湿気ているのだという。
もちろん、モンスーン型というわけではないだろうから、
少し湿気ていようとも気候が日本のようになるはずはないけれど、
フランスでかくも苔の生えた土地があると知っただけで、
自分にとっては発見だった。

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