5.4.09

桜に想うことごと

路沿いのそこここに、あるいはずらりと、桜が満開になっている。
はっきり云って見慣れてしまったので、綺麗と感じない。
夕陽に照らされて赫く輝きつつ、裏側に影を帯びた
鰯雲の群れのほうが、よっぽど綺麗だ。

汚らしく色彩の散らかった街に桜が咲いたところで
ごてごてしさが増すだけなので、
桜は人家のない山で観るべきだ。
夏前のまだ濃い緑の一面に混じって、桜が見えると、
それこそ、心からタナトスを感じるだろう。
坂口安吾のように、強盗や戦争の栄えを見出だすだろう。

私の場合は、馬鹿騒ぎを誘発する厄介なハレなどごめんだ、とばかり、
世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし、と
在原業平の一歌が浮かんだ。
そして、坂の上から遠近に咲く花を見下ろして、
その毒々しさを厭わしく感じた。

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