11.4.09

大阪には戻らない

 僕は18年間、そこで実に多くを学んだ。街は僕の心にしっかりと根を下ろし、想い出の殆んどはそこに結びついている。しかし大学に入った春にこの街を離れた時、僕は心の底からホッとした。
 (村上春樹『風の歌を聴け』)

ほんのときどきだけど、村上春樹の『風の歌を聴け』を読み返したくなる。
それは故郷の大阪を遠く離れた仙台の大学に入ってからのことで、
読んでいるときの気分は、ありもしない過去を
代筆で仕上げてもらった回想録に浸っているようだ。

風が心地よいので、窓を明けっ放しにして、
畳に寝転んで、がらんとした家にいる。

狭い1Kに二人で棲んでいたことも、そういえばあった。
近づいてくる出国日の別れを世界の終りのように思いながら、何度も涙した。
でも、もちろん世界は終わらずに、
いろいろなことを巻き込みながら、淡々と時間が過ぎた。
自分は帰国し、やがて独りぼっちになって仙台を離れた。

今は2DKに独りで棲んでいて、だらだらと終わらない本の整理をしている。
過去にあったさまざまなことも、ほとんど忘れてしまった。

0 件のコメント: