4.5.09

赤司道雄『聖書 これをいかに読むか』、アーサー・ミラー「セールスマンの死」、マルグリット・デュラス『破壊しに、と彼女は言う』

・赤司道雄『聖書 これをいかに読むか』

久しぶりの新書。
聖書に(神話学・民俗学的)興味を持ってからそう短くないのに
解説本に当たってこなかった怠慢さがあった。
最近では単なる箴言集のようになってしまった聖書を、
改めて統一的・有機的に時分の頭の中で組み立てたく思っていた。
そんなわけで、家の隅にあったこの新書。
もちろん入門書でしかないのだけれど、
導入としてよい本だったと思う。


・アーサー・ミラー「セールスマンの死」

戯曲でも、こういうふうにして幻想を織り交ぜられるのか、と
ちょっと驚きだった。
そして、この作品が書かれて60年たった今でも
この作品の提起する問いかけが現代の社会問題として取り扱われ、
解決のわずかな糸口すらつかめていないことに、
哀れさと滑稽さを感じる。
そんなわけで、戦後に拓けた郊外の住宅地というのは
無数のセールスマンの墓場なわけ。
仙台市泉区とか、八王子市とか、横浜市田園都市線沿線とかね。
痛々しいね、でもこれが経済だから。資本主義だから。


・マルグリット・デュラス『破壊しに、と彼女は言う』

« DÉTRUIRE DIT-ELLE » が原題。
破壊「しに」、なのかなぁ? それはええとして。
読めばわかるけど、dit-elle. がいたるところに。
そして、会話。舞台はホテルの一階だけど、非常に抽象的。
登場人物は男二人の会話。あと数人出てくるけど、
実在しないように思われる。
そして、物語は、題名どおり破壊されていて、
脈絡を作り出そうという意図がところどころで現れても
それは沈黙その他によって切断されてしまう。
さらに云えば、この作品は小説というよりは
戯曲だし、でも根底では小説だし、
何なんだろう。
現代の「饗宴」? でも、誰も何も食べない。
眠りが眠られているだけ。

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