29.12.09

イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』/芦屋まで

延々とマルコ・ポーロが語る都市像は細部だけがきらめいて、
しかしそれらが指し示す都市全体のありさまは、
幻想的なまでに抽象的で、細切れのまま有耶無耶に果てる。
マルコ・ポーロとフビライ・ハンの静謐な語りそのものも
幻想の霧に包まれて、やがて見えなくなってしまうかのよう。
さまざまな街が砂上に語られて浮かび上がり、消えるイメージは、
野又穣の画集を眺めては繰るような感触だった。
夢心地に語られるとはいえ、ウルからニューヨーク、さらに
我々も知らぬ未来の都市まで、すべてをひっくるめて、
(単数形定冠詞つきで)la città invisibiliなんだろうか。
シュミラークル都市(としてある意味で語りやすい)東京も勿論あったし、
これまで住んだ、訪れたいくつかの街も少しずつ散見された。

これは一つの小説なのか、都市を材に取った掌篇集なのか。
自分は詩集のように常にポケットに忍ばせたいと思った。
翻訳も美しい。

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国道171号線沿いに芦屋まで自転車で行った。
高級宅地の六麓荘は、大学まで有して巨大で有名だが、
逗子の披露山住宅のほうが塀がないぶん見目は勝ろう。
緑越しに海を見晴るかせるのもよい。

途中、昆陽池に立ち寄った。
池上の日本列島はそうと知っていても、
岸からは見えなかった。
機上から眺めるためだけのものだから、仕方ない。

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