16.1.10

ポール・ヴィリリオ『情報化爆弾』、黒沢清『ニンゲン合格』

・ポール・ヴィリリオ『情報化爆弾』

科学は技術とは別物、という態度は
ヨーロッパ型教養人、って感じ。
科学すなわち応用技術、常に進歩あるのみ、
という科学の態度と、資本主義の類似性の指摘。
映画、テレビ、インターネットによる
地理感の喪失、加えてニュートン的絶対時間感の喪失
(テレビ的なカットや編集の多用によって
 均一に時間が流れる平衡感覚を失うことを、
 単なるパラダイム移行と片づけられるのだろうか)。
そして世界は均一化へ向かう。
差異を価値とし、それを埋め合わせながら
新たな差異を開拓し、商品化することが
資本主義の本質である以上、
これは避けられない事態だ。
しかし、脳や思考といった最後の「未開」が
そのターゲットとされ、クローンや洗脳技術として
埋められてゆく。
生命は均一な状態からエントロピーを摂取することで
環境変化に対応し、生き延びてきた。
それをテクノロジーが均一化すればどうなるのか…。
実際、単一市場という資本主義の最終目的にして
非常に暴力的な非人間的な場は、
アジア通貨危機、株価の世界的暴落として
すでに現出している。

とまぁ、こんな内容。
トポスの喪失はよくわかるが、
速度的なパラダイムは、新しい見方だった。
現代藝術や民主主義政治のパフォーマンス化は、
加速度的な時間観(「もっと早く、もっと効率よく」)
を導入すれば、とてもわかりやすい。


・黒沢清『ニンゲン合格』

思ってたより淡々としてて、味わい深かった。
静かで冷たそうに時間は流れるけど、
人間(じんかん)に生きてこその人間(にんげん)だからね。

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