「女の庭」「嫁入り前」の短篇二作を収める。
どちらも材は女性性について。
「女の庭」…主婦の倦怠とその欺き合いとしての井戸端会議の話。
隣室に越してきた外国人ナオミを自分と照らし合わせ貶めることで、
逆に、下卑た自分の耐え難い凡庸と生き様を浮かび上がらせる。
息つかせない語りの飛翔感が良い。
一見ありきたりな言説でも、自らの発言になっていて、肉があった。
凡庸になってしまった悲劇、というプロットであればと
「主婦」を「会社員」「社会人」と読み替えてみた。
日々の怠惰な生活に没し、平凡な身の上で、主体性がない、
そんなありふれた存在の嘆きなのだ、と(男の私にも)理解できた。
だが、最後のオチは結論へ早急に思われた。
『六〇〇〇度の愛』と同じオチで、
劇的な生を実直さが超越する、とでもいえばよいか。
おそらく中年期の最初に通過する道なのだろう。
が、私にはまだ哀しく感じられる。
「嫁入り前」…男女、堅い柔らかい、の対がいくつも寓意になり、
ストーリーともいえないストーリーが進む。
雄弁と無口、処女と娼婦、親と子、なども巻き込まれてゆき、
気の利いた象徴の羅列のように読んだ。
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