30.12.08

ネルヴァル「シルヴィ」/同窓会の教師たち

プルーストに大いに影響を与えたというくらいだから、
読感と詩的さはとてもよく似ている。
記憶と現実の間を彷徨する感覚は、藝術そのもの。
日本の私小説に似ている気がしたが、背景があまりに違う。
私小説は明治による近代的自我の発露で、
どっちかっちゅーと屈折ギリシャ、という感じ。ゴシック?
で、ネルヴァルはロマン主義といわれるけど、
……そんなのどうでもいいか。とにかく、散文詩という感覚。
人生を謳歌しているようではあるが、健康的ではない。

ロートレアモン卿「マルドロールの歌」は、中途抛棄。
キリスト教的な善悪二元論のアンチテーゼ側の残照という感じ。
バタイユほどにぎらついた毒の強さはわかるけど、
そこまで悪を強調されると鼻白んでしまう。
あまりに悪を自称するので、
マルドロールってのはMal drôleなのではないかと思ったが、
Maldororが実際だった。

同窓会補記。
教師は、生徒を惹きつけた人以外は
生徒の同窓会に参加しない方が身のためだと思う。
大多数の教師はその特権的な立場だけで生徒を抑えつけていたわけで、
知性が優れているとも、統治に長けているとも限らないのだから、
教師-生徒の軛を外れた会合に、旧い地位だけで出没されたところで
アルカイックな存在がうごめいているように生徒には見えるだけだし、
ともすれば、教師職の拠り所である専門分野で
「出藍の誉」と自らの劣勢を喰らうかもしれないのだから。
残念ながら、そのような教師しか、一昨日の会にはいなかった。
過去に自分を惹きつけた先生たちはいたが、会うことは能わなかった。

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