2004年の同じ画家の画集『Point of View 視線の変遷』を、
私は持っていないが知っている。
その、前の画集を買えなかった反動か、今回の画集はすぐさま購入した。
そこからの最も大きな変遷は、
バベル的な建物群と、イリュミネーションに光る建物群だ。
また、前作では、世界は無人のまま、ただ吹く風を感じさせるものが多かった。
今回の画集に入っている作品にはもちろん重複はあるが、新作の多くは、
巨大な高層建築として統一的にデザインされながらも細部がわずかに綻びていたり、
八割方建てられているバベルの塔の周囲に飯場とおぼしき小屋があったり、
建造物というよりむしろオブジェのように光る周囲に祭りめいた光りが瞬いていたりと、
遥かに遠い人の気配が仄かながら感じられるような気がした。
野又は若い頃によく臨海へ景色を観に行ったと、画集末尾の寄稿にあったが、
今日、根岸線の根岸駅から新杉田駅までの車窓から見える工場群を眺めて、
彼の作品に見えるその影響を感じずにはいられなかった。
野又穫の絵は、おそらく誰の心をも摑むだろう。
ネットで検索していくつかの作品を見れば、
不思議な感覚に包まれるその絵の魅力はすぐに知れるはずだ。
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