21.10.10

福永信『星座から見た地球』

A、B、C、Dの四人の小話が一段落ずつ、順繰りに延々と続く。
シャボン玉やバスの話、病院での奇妙な冒険譚、出会い、別れ、生、死、…。
そのときどきで、AはさっきのAと別の子(猫?)だし、
時間軸を遡ったり、あっちこっちでエピソード同士が重なったり翳めたりする。

ストーリーはない。いや、無数にある。
風景の点描からあぶり出されるような淡い物語のかずかずだ。
大きな一本のストーリーとしての小説を予想すると、見事に裏切られる。
なんか、ふっと暖かい。
大人のわからないところで、子供や猫や、まだ産まれていない胎児や、雰囲気が、
そっとことの成り行きを見守りつつくすくす笑っているような。

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