セルジュ・ブルギニヨン『シベールの日曜日』
原題はCybèle ou les dimanches de ville d'Avray。
記憶喪失の奥に兵士として少女を撃ち殺した葛藤を抱えたピエールが、
寄宿学校に捨てられたシベールに惹かれたのは、
記憶に疼くものがあったからだろう。
シベール役のパトリシア・ゴッジの
容姿と仕草のかわいらしさが光る作品でありつも、
カメラワークが繊細で詩的だったのが印象的。
「寄宿学校のベッドで作り物の青い石が肩に触れたときに
ピエール(Pierre=石)のキスを感じた」というシベールの独白も、
曇ったガラス越しに池を眺めるピエールの眼差しも、
Cybèleの名が明されたときすぐさま同音のsi belleに変じ
その美しい風景がクリスマスの夜にすぐに消えてしまうはかなさも。
池のほとりのカフェで暖炉の火に照らされる陰翳の美しさは白黒とは思えない。
磯田道史『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』
加賀藩の御算用者の猪山家がどのように取り立てられ、
廃藩置県を経て海軍省官僚として身を立てたかが時系列をもって開陳される過程が、
たいへん史料考証的で面白かった。
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