EMINEMのMoshを聴いた。
これ聴くたびに、生々しい単語単語だけがぽつぽつと耳に残って、
悲痛な叫び声のような歌声と混じって、なぜか泣きたくなるんだよね。
そして、ブッシュかゴアかを分けた2004年大統領選の文脈と
マケインかオバマかを分けた2008年大統領選の文脈が、
状況はさほど変わらないはずなのにあまりに違っていることに驚いた。
そして、どちらをとっても宗教対決であるという変わらぬ事実にも気づいた。
2004年は、宗教右派v.s.反戦良識派だった。
論点の主眼はイラク戦争の是非であって、
そのためにEMINEMはMoshで
内政充実とでっちあげ戦争反対を表明したが、
正義教へと変異したWASPキリスト教にとっては、
何よりもまずイラクという悪への恐怖感に、
そして石油利権と経済効果、市場開拓という魅力に駆り立てられて、
環境論者ゴアではなくて資本家・保守派のブッシュが選ばれた。
イラク戦争を進めたことを除けば、
ブッシュが大して何もしなかったことに注目すべきだ。
アメリカの宗教右派は単なる保守論者である以上、
ブッシュは看板的存在で充分なのだ。
2008年は、変革派v.s.保守派だった。
最大の論点としての経済は、右派の安泰さの巣窟であるために、
経済政策への期待はもちろん変革側に向けられる。
そして何より、今回の大統領選の実質的な内容のなさ。
閉塞感という漠然としたものの存在が、
オバマ勝利への最大の論点ではなかったか。
アメリカ大統領候補者初の女性か黒人か、という
民主党内戦を広告として最大限に活かしたオバマは、
彼自身が出自と生い立ちから見ても華々しきコスモポリタンだ。
対抗馬はというと、軍人上がりの上院議員という、これまでの大統領候補の典型。
これではもうイメージだけで勝敗は見え隠れしていると云えなくもない。
オバマが多用した表現として、change、主語にweを使う、というところが、
ただただ漠然と変革感、閉塞打破を示しているのである。
だが、それは悪いことではない。
政治家として最悪なのは政治家という型にはまることであって、
例えばフランスではベルナール・クシュネル、ジョゼ・ボヴェ、
アメリカではアル・ゴア、のような
活動家でもあり政治家、という良識派が日本にはいないのだから、
ブッシュやマケインの生き写しとしての麻生太郎が
なし崩しに政権を担っているのも、仕方がないのかもしれない。
だが、先ほど示したように、要はイメージであって(政治は神学なのだから)、
オバマはそれをうまく示したから勝利した。
代わりがいないからしょうがなく麻生、というのは最低の判断だ。
誰もがオバマのように戦略に長けているわけではないから、
きちんと自分で候補者を、候補者の公約や活動を見て、
少しでもマシなのを選ばなければいけないと思う。
日本での良識派政治家の不在について。
緑の党、のような環境政党が日本にはない、という事実からもわかるし、
そもそも政治に良識派が必要とされた試しがないから、
死刑存続も高すぎる学費もトービン税導入も議論されない
(死刑と学費については、どちらとも国連から是正勧告を受けている)。
アメリカの場合、弱小政党としての緑の党とは別に、
民主党が多少だがその役割を持っていることが、主にゴアの事例からわかる。
政治が国民を疎外していることが、良識派不在の最大要素だから、
このまま公明自民党(支持基盤から、あえてそう呼ぼう)を与党にし続けると、
日本は閉塞感を払拭できないまま、先進国の表舞台から消えるだろう。
そういう国は、過去にいくらでもあるのだから、その道を行くはたやすい。
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