9.2.09

市川準『トニー滝谷』

祖父が亡くなったので急遽帰阪、明日に仙台に戻る。

『トニー滝谷』。原作の村上春樹っぽさを残した文体のナレーションで、
村上春樹ってのは叙事詩だな、と思った。
短篇としては大昔、そうだな、六年ぐらい前に読んでいたが、
映画を観て、すっかり忘れていることに気づいた。
名前の由来からして人と人とのすれ違いと偶然からぽっと現れた、
そんな、来歴ともいえぬ出自をもつ一人の男が、
いかにして孤独を見出だし、生きてきたかが、
常に左から右へスライドするカメラワークにのって淡々と綴られる。
孤独な雰囲気が孤独を語るから、
孤独なんぞ何でもないというように物語は進む。
それが、一番つらく、一番心惹かれた。

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