1.2.09

映画三昧ふたたび 『blue』『晩菊』『山のあなた』


安藤尋『blue』

原作は魚喃キリコ。クレベール広場のクレベール書店で
フランス語版を買おうか何度も悩んで、結局買わなかった。
科白が一連の表白ではなくて、小泡の羅列のように、
プツリ、プツリと発せられては消えて、また発せられる。
登場人物はそばにいようとしながら隔たっているし、
カメラも人を被写体に移動はするけど風景を撮っているよう。
つまらなそうな田舎と中途半端な街と灰色校舎の学校が舞台、
でもそのそばに海がひらけていて、どこまでも海岸が続いている。
どっちにも惹かれ、どっちにも溶け込めないで、
ただ漂うばかりも青さだった。青春なんやろか。
青春って、ほんま醜くてぶざまで、でも海がそばにあるからええなぁ。


成瀬巳喜男『晩菊』

哀愁ばかり漂う現実感で、救いがなくてちょっと辛かった。
原作が林芙美子だから?
にしても、戦後の日本の民家って、本当に「路地」やね。
中上健次ばかりが路地文学ではないのかも。
逆に、青山真治も阿部和重も北九州と山形に
サーガを作ろうとしたんだから、
中上健次の出自が路地の背景にあるからといって路地文学というのは
本質を見失ってるのかもしれない。なんて、全然映画関係ないやん。
でも、同じ路地でも義理人情を素朴に出せばこういう感じ、
歴史の因果と円環を見出せば中上になる、ということはいえるかも。
コンクリートジャングルの迷子たちの世界になったいま、
失った人情を手のひらで転がして酒を飲めば村上春樹?


石井克人『山のあなた』

草彅剛の演技がうまいっ! に尽きるかな。

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