23.2.09

坂口安吾『桜の森の満開の下』、川端康成『眠れる美女』

このところ無意識ながら本のセレクションが「女」と「妖」。

・坂口安吾『桜の森の満開の下』
幻想小説というか、幻惑小説というか。
美の崇高さと冷酷さ、この不可分の特に後者が出ていて、
おどろおどろしかったけど綺麗で妖艶で。
狂ってると片づけられなくて、中世の両義性?
(あかんなぁ、最近こういう民族学的な片づけ方ばかり……)
もちろん、それは一面でしかないやんねー。あーあ。
とにかく、色鮮やか。満開の桜色、山々の緑。
その下で「狂って」ゆく男、女、そして時空。
印象的だった。柔らかい色なのに、歪んでゆくんだから。

・川端康成『眠れる美女』
何人もの美女を通じて老人の人生の性の来歴が振り返られ、
だからどの美女でも良いわけではなくて、
最後におかみさんに「みんな一緒でしょ」みたいに云われて興醒め。
「美」という一般形があるように描写しておいて
実際には一意ではなくて差異に基づく、みたいな、
その隙間を飄々とゆくような美しい文章が続くのが、すごく心地よい。

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