一月末に仙台にいる意味を失ってから、ようやく仙台を出た。
今は東京にいて、精神の安寧を取り戻している。
谷崎潤一郎『痴人の愛』
Naomiという音の愛撫から始まるので、
ナボコフの『ロリータ』を下敷きにしているのかと思ったが、
それだけでない、日本文学としての味つけとして
西洋崇拝も随所に散りばめられている。
ナオミ-譲治の主従の基盤にそれがあるのだ。
谷崎とはとかく主従関係の逆転だが、
恋愛の駆け引きに埋め込まれ、なお面白く読んだ。
いかんね、感想を書くとこうも分析的になって。
読後、女性に未練の残るときに薬になるな、と思った(笑)
坂口安吾『戦争と一人の女』『続戦争と一人の女』
破壊が創造の補完であることは山口昌男などから周知だが、
傍目からは「堕落」であろうのにそんな感じのしない、
むしろ不思議な作品で、非常に面白かった。
敗戦色の濃い日本に根を張った夫婦生活、これが舞台なのかな。
非日常に根を張った日常、自家撞着的なこのスタンスには、
自然と、緊張感としぶとさと頽廃さが漲っている。
高橋しんの漫画『最終兵器彼女』に少し似ているように思った。
特に、自分たちだけが最後に生き残ろう、として
焼夷弾の夜襲で赤く染まった夜空の下で、消火に我を忘れるところが。
自分たち即世界という、神話的ですらある短絡・明快さが似ている。
もっとも、この作品は、高揚の醒める敗戦が
全てをぶちこわしてしまうから、あsる意味でいいんだけど。
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