1.2.10

田中慎弥「図書準備室」、澁澤龍彦『初期小説集』

田中慎弥「図書準備室」

中篇としてそつがない、とでも云おうか…。
何が書きたかったんだろう。
何かを信じることと、全く逃げ続けることの、両極端?
小説で○○を書こう、ではなく、小説書こう、という意図でできた、
みたいな、そんな作品。
妙につるんとしてて、面白さのスパイス的なものがなかった。


澁澤龍彦『初期小説集』

博識の独白のような文体と、夥しい情報量、
これらに覆い隠されるようにして、
時間経緯の欠如があるのを、感じた。
日常にピン留めされない、祭じみた、あるいは寓話じみた時間が流れる。

それはいいとして…やはり面白い。
「陽物神譚」は、横尾忠則のような原色のキャンバスに
中世の陰陽をちりばめて夜にしたような、すばらしい短篇だった。

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