尼崎の路地裏と輪島の海辺、昼と夜、四季、
淡々とストーリーが進むにつれて、景色も情景もただ淡々と追ってゆく。
だからこそ、祖母の失踪と夫の自殺が、
言葉少なく謎として大きく取り残される。
それを静かに受け止め、深く心に負って、
20代から30代へと歳をとってゆく主人公の姿を、
あわれでむなしい思いで観た(自分が近しい年齢だからかもしれないが)。
画面の右の窓から眺めやるシーンが反復されて、印象的だった。
あまりカメラワークのない場面の切り取りは、
しばしば陰翳の深い逆光だったりして、
詩的な印象を受けた。
最後、入り江の夕暮れの場面は、申し分なく美しかった。
寄せる波の穏やかな音に、
暮れなずんだ夕空をバックにした黒い影が内海にも逆映りしている。
そうして歩く二人が近づきつ遠ざかりつする。
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