27.12.10

トラン・アン・ユン『ノルウェイの森』、よしながふみ『きのう何食べた?』(〜4巻)

 トラン・アン・ユン『ノルウェイの森』

新宿三丁目のバルト9にて鑑賞。
上下巻ある長篇の原作をどう映画一本に収めるのか、興味があった。
トラン・アン・ユンらしく、綺麗なシーンの断片を繋いで
どんどん物語内の時計の針が進んでゆく、そんな進行だった。
だからすでに原作を読んだ観客には、
ありありと現前した要約を走り読む心地よさがあったし、
読んだことがなくても、細部を繋ぎあわせる余情が味わえたろう。

原作の帯びには「喪失と再生」という表現があったような気がする。
直子と緑、あるいは、京都の深い森と東京の喧騒、と言い換えてもよい。
もちろん、キズキと僕、でも。
映画では前者が主題であり、ことさらに喪失と死が際立っていた。
原作終盤で再生の大きな第一歩たる(ように思われる)レイコさんとの交わりも、
喪失に楔を打つような涙にくれたシーンだった。
映画館で涙が流れたのは本当に久しい体験だったが、
それはこの原作解釈のゆえだと思う。
後半の幾箇所ですでに涙腺はゆるゆるだった。
もっとも心に響いたのは、二つ。
初美さんの死をエピソード的に告げるナレーションと、
エンドロールの音楽The Beatles "Norwegian Wood (This Bird Has Flown)"の
劇場ならではの大音響で鋭いギター。
エンディングテーマで泣くのは理解されがたいだろうが、
柔らかく聴き心地の良さをもっぱら好んで聴いていた曲だけに、
映画全体の冷たい悲しみを帯びて歯向かってきたような。


 よしながふみ『きのう何食べた?』(〜4巻)

さほど難しそうなレシピはないとはいえ、
こんだけ真面目にきちんと
味つけや下茹でなどできれば本当にすごいと思う。
ずぼらでいい加減で作り置き中心の怠惰な一人暮らしの身として反省。

0 件のコメント: