3.1.11

コレット『青い麦』

原題 « Le Blé en Herbe »。
半世紀以上も前の堀口大學訳だから、
翻訳調の日本語がぎくしゃくして感じられた。
正直いって、新訳ならもっと瑞々しく物語を味わえたかもしれない。

幼なじみの男女という設定から、吉本ばなな『ハネムーン』を思い出した。
そちらでは男女はすでに老成していて、
単に、えらく若い夫婦、というだけだった
(それは措いて面白い小説だったけど)。
『青い麦』は典型的な青春小説で、その期をとうに経て読めば
悩みも相手への覚束なさも紋切り型だ。
それでも、その描写の的確さと若いひたむきさが読ませる。
また、コレットの描く女性は、みな活発さと大胆さが魅力的だ。

フィリップとヴァンカを取り巻いてそれぞれの両親は「影」と表現されている。
主人公だけでなく青春期にとっては文字通り、
大人はみな同じく影のように背後に立つにすぎない存在だからだろう。
ブルターニュでのヴァカンスで目に入るものは、海と自然の雄大な繊細さ、
そしてお互いに意識した感情のみ、ということ。

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