においを主題に採った映画ということで、
主人公はアロマサロンで働き、お相手の高校生は剣道部という、
においからの舞台連想としては安直に思った。
だが、嗅覚という普段意識しない評価軸が持ち出されることで、
汗臭さが魅惑的な個人識別に変じ、
アイドル的存在の女の子が香水臭いと一蹴される、
その思いがけなさはあった。
徹也(染谷将太)の自身なさそうにうつむきがちな演技が
思春期の高校生っぽくて良かった反面、
みほ(木嶋のりこ)のアホ女子高生っぷりがステレオタイプすぎると思う。
BGMの引かれ方と舞台の整いはテレビドラマ的で興醒めなときがあった。
映画は日常に溶けていながらもカメラと編集によって沸き起こるものであってほしいから、
舞台が主題以外を明快に斬り捨てているというのはちょっと…。
それが一般受けする映画ということになるのだろうけれども。
ただ、廃墟内でユリ子(江口のりこ)が徹也の頭を嗅ぐ逆光の場面は
ユリ子の動きがスクリーン全体の明度のゆらぎとなって、美しかった。
あと、最後にゆっくり結ばれるシーン、まわりの小物すべてが馥郁と香って好かった。
この映画の最大の魅力は、やはり嗅覚の動員に尽きる。
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