2.11.08

『世界文学を読みほどく スタンダールからピンチョンまで』『都市ヨコハマをつくる 実践的まちづくり手法』

前者は池澤夏樹の講義録。
ピンチョンを読んだ後で、ちょっとその解説を欲したため。
池澤さんは独特の読感を味わわせてくれる貴重な作家で、
『スティル・ライフ』みたいな詩のような綺麗な小説を書ける一方、
ちゃんとそんな空気を保ちながらも『マシアス・ギリの失脚』のような
小国一代記みたいなのもあるという、稀有な存在だが、
この本に、大変な勉強家でもあるという事実をはっきりと突きつけられた。
いやぁ、すごい。やっぱり作家の力量って、なんだかんだ云っても
結局は読書量と(大江健三郎的な意味での)想像力だな、と思った。

後者は、横浜市の都市計画に関わった人物の手になる中公新書。
空襲と米軍接収に荒廃した横浜市を復興させヨコハマにまでした経緯を
たった一冊の短い新書にまとめているものだから、
本当は交渉に疲弊して難航に難航したであろう物語が
サルでも分かる単純なプロジェクトX群にでっち上げられているところが
ちょっと滑稽だが、内容は勉強になる。
長期計画は、ビジョンの先をも見越して立てられなければならない、
そんな実例を山のようにあげられては、圧倒されるほかない。
(衛星都市、海港という)東京のの補完機能の一つにすぎないはずの横浜が、
どうして千葉や埼玉や東京中西部の無数の市町村のような
無個性な住宅地に成り下がらずにいられたのか、
これを省察することは、街並が「無秩序」で「汚い」とされる国の一市民として
必要なことなのかもしれないから。
とまぁ、清らかな志に聞こえるかもしれぬが、
その実は、延々と政治力学の駆け引き、駆け引き、駆け引きだった、という
どんでん返しなんだけれどもね。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

町がある。
町は作られたものである。
町は出来あがったものである。
この先に来るのはいったい何だろう??
そんな卒論に悩む毎日です(泣)