時間と登場人物が交錯し、円環する。
こんなに不思議で神秘的で神話的で構造的で冷徹な小説は、読んだことがない。
一人称がどんどん入れ替わり、思い出を語り、思い出はさらに過去を語る。
声と過去が層を織りなし、それが生きられた歴史なのか、みないなくなった残滓なのか。
とにかく物悲しい。そして、これは文学だと思った。
街にいた神父が叛乱軍に加わり街を見捨てた、という語りは、物語の円環においても
暴力的な外部として、決定的に状況をずらす。
その下りは非常に胸を打った。
神父だけではない、みな悩んで悔いて、考え、語りあい、そしてずるずると朽ちてゆく。
一生懸命に朽ちてゆくのだ。
街からは誰もが消えて、影と声だけを発する死者たちが残される。
何度か読まねば。ちょっとまだわかりかねている。
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