──あなたが述べられたような、現況への前例というようなものはあったのでしょうか?
人類の歴史の中で幾度もありました。このことは、マルクス主義的見方にもあるような、継続的で不可欠な進歩という、19世紀に作り上げられた歴史像から想起されるものとは、正反対です。私としては、進歩の可能性というテーマにこだわりたいのであって、進歩の不可避性には興味はないのです。確かに資本主義は、尋常ならざる驚くべきやり方で財や富を最大限に生産するということを、ノウハウとして持っています。だが、見ておかねばならないのは、同じ過程で環境や社会に対して齎される損失の総体なのです。唯一の美点は、理性的で知的な生活を最大多数が享受できるという点です。
ところで、今日の危機に一番近くに起きた類型は、15世紀中葉と16世紀中葉の間での、ヨーロッパの封建制の瓦解、そして、資本主義制への移行です。その時期には宗教戦争とともに最高潮を迎えるのですが、王権や領主権や教会権が、最も富を蓄えた農村や都市に対して保持していた支配力が、崩壊するときだったのです。まさにそのときが、脈々たる試行錯誤と意図せざるやり方でもって、不測の解決策が打ち立てられていたわけです。その達成は資本主義という形態のもとで少しずつ理解されながら、「システムづくり」を最後に迎えるのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿