啓蒙ではなく経済効果に統べられた煉瓦作りである
(おざなりの仮カウンターだけで利用者を捌き続けた後、
この決算期に耐震工事を終えて再開したのだから、間違いない)。
その、夥しい新陳代謝と、弛緩し切った雑文の林立する中に
塚本邦雄の歌集を見つけたときには、まるで癌だな、とにやりとした。
借りて、手許にあるが、棚に置いておけば、じくじくと反乱をしてくれたろうか?
「日本人靈歌」は、高度成長下の黒い部分をぎらぎらと照らしていて、
でも、バブル崩壊後の迷走するニッポンしか知らない私には、
その良い面も悪い面も、お祭りのような賑やかさに感じられる。
暗渠詰まりしかば春暁を奉仕せり噴泉・La fontaine (「日本人靈歌」より)
詰まった排水溝の汚さから、春の日の出、そして噴水へ、という流れの、
あまりに綺麗な風景、そして、日本社会の空気をそこに込めるのは塚本ならでは。
朝っぱらからそんな労働に駆り出された(おそらく)土工をも包む、
この漲るような高度成長の空気って、どうよ?
「噴泉」も「La fontaine」も「ラ・フォンテーヌ」とルビで読ませていて、
そのルフランと、漢字からフランス語への書き方の変更が、
連想の流れを異国にぶっ飛ばしてくれるかのよう。
他のどの歌も、かくもといわんばかりの着眼点と破壊力をもって迫ってくるので、
嘆息に嘆息を重ねてばかりいる。
萬國旗つくりのねむい饒舌がつなぐ戰爭と平和と危機と (「水葬物語」より)
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