31.3.09

小津安二郎『お早よう』、島田雅彦『自由死刑』

・小津安二郎『お早よう』

団地や建売の個性なき家屋の連なりに住むという、
資本主義なのか社会主義なのかわからない高度成長下日本の家族群像でもあるし、
挨拶って、という子供の必死で純粋で滑稽な反抗の顛末でもある。
こんなに詰め込んで90分内という密度と、それを感じさせないゆるい展開と。
噛み締めるように観てこその映画なんやろな、と。


・島田雅彦『自由死刑』

冒頭、妙にぶった口調で現代の閉塞と疲弊を語るよ、と思っていた。
途中、車谷長吉の『忌中』を、似た物語として思い出した。
彼の初期作品は社会概念の戯れ・揶揄だが
後は人それぞれの生きざまに焦点を当てて、
だから、天皇の『おことば』みたいな、政治機能と個人という天皇の両機能を
混同するようなもんを書いたりしたのかな、と思ったりもした。
終盤、そんな個々人それぞれの生きざまから
社会風刺を透けさせるというやり手さを、『退廃姉妹』とは別の切り口で見た。
「自由死刑」の語。思えば人生って、「自由死刑」。
数年から数十年の自由を、デン、と押しつけられて、
その先にあるのは例外なく死刑、というのだから、まさにそのとおりだ。

あとね、旅と、ぐいぐいひっぱる加速度。すげーおもろかった。

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