・島田雅彦『退廃姉妹』
「頽廃」の語は、姉妹にかかるのではなくて、
斜陽とか堕落と同様、敗戦後の占領期の日本、の意味だろうと思う。
姉妹の変化は頽廃ではなく脱皮だったし、
時代が時代でも若さ故か輝いて、
姉の西行きの旅は、あまりに雅があった。
その意味では、散る花の美しさのような日本の美があって
敗戦期の話とはまるで思えないし、
特攻隊も軍部腐敗も、官僚制の産物として笑う態度は
同じ日本の負をしかと見つめる態度として、
阿呆な耽美派右翼よりも冷静だった。
日本という文化は、どれもそうだけど、容れ物であって、
生け花とか茶道とかいう安直な上っ面ではない。
だから、闇市や占領期がそこに入ったところで、
日本式に換骨奪胎されるのだ。
だから、戦後に姉妹はアメリカを乗っ取ろうとするし、
エピローグに示されるように、姉妹は日本史に遍在する。
・成瀬巳喜男『乱れる』
乱れた場面なんてほとんどなかった。
義理の行く末をどこまでも描き切る、という感じはやはり流石。
終盤なのに、汽車に乗って舞台飛ぶしね。
清水だったのが、山形の大石田、銀山温泉まで。
高峰秀子の、翻弄されながらも哀しく耐える役柄って、いいね。
鼻にかかる話し方が、『浮雲』でも感じたが、
尾を引く過去のしがらみを背後に感じさせて、
損と云えば損なそんな役回りにぴったり。
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