15.3.09

吉田喜重『鏡の女たち』、夏目漱石『道草』、成瀬巳喜男『あにいもうと』


・吉田喜重『鏡の女たち』

女が鏡である。割れていても、記憶が戻らずとも、
原爆があろうと男が関わってこようと、
受け止めて生きてゆく。
ヒロシマさえ相対化されて見えてくるほど、
強さとしなやかさと、健気さがあった。


・夏目漱石『道草』

漱石らしくない。
自然主義ではないよね、漱石って? と確認してしまう。
自然主義的な切り口で、書き口は心理小説。
題材を見れば私小説。
天才文豪は何でも書けるのだな、と恐れ入った。
人間観察の鋭さは、さすが学問からその外部を見つめた漱石だ。


・成瀬巳喜男『あにいもうと』

室生犀星が原作だが、読んだっけ…?
犀星の小説はほとんど読んでいるはずだが、
ストーリーは記憶にない。
成瀬らしい愛憎の折り重なりを期待したが、
うーん…という感じだった。

0 件のコメント: